音音是好音 〜 布施音人のブログ

ロシア語の場所を表す前置詞とウクライナ

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ロシア語の場所を表す前置詞 вна

私は大学で第二外国語としてロシア語を選択し、一時期はかなり夢中で勉強していた(つもりである)。

ロシア語には、場所を表す前置詞 вна がある。どちらも同じ「・・・の中で」、「・・・の上・表面で」の意味を表し、「в / на のいずれをとるかは名詞によってほぼ決まっている」(学部の頃のロシア語の教科書より)。

教科書には、на を用いる名詞の例として、вокзал(駅)、почта(郵便局)などのほか、Урал(ウラル)、Кавказ(コーカサス)などの地域名が載っている。一方、「ロシア」「ドイツ」「日本」などの国名には в を使う。

確か授業でこの部分を教わったとき、「ウクライナ」にこれらの前置詞を付けるとき、ロシア人は на の方を使う、という話を先生がおっしゃっていた。今回それを確かめたくて当時のノートを引っ張り出してみたところ、該当部分の記述を見つけた。

大学1年生の夏学期のノート
▲大学1年生の夏学期のノート

このメモによれば、「ウクライナ」Украина に前置詞 в / на を付ける場合、ロシアでは на を、ウクライナでは в を付ける傾向があるようである。

ノートで横に「край←辺境」と書いてあるのは、「ウクライナ」という単語は「辺境」「地域」「隅」といった意味の край(「クラーイ」)と関係がある、という話だったと記憶している。

ゼレンスキー大統領とプーチン大統領の演説

ウクライナのゼレンスキー大統領とロシアのプーチン大統領の演説の中でも前置詞の違いがあった。

プーチン大統領が「軍事行動」を宣言した2/24の演説。RIAノーボスチのページ(リンク切れがなければここ)で Украинев / на のうしろに付く形)で検索すると、на Украине という組み合わせばかりがでてくる。

一方、ゼレンスキー大統領がその前日の2/23に行った演説は、後ろの7割ほどがロシア語でロシア国民に語りかける内容だったが、その全文と英訳を見つけた(リンク切れがなければここ)のでここでも Украине で検索すると、в Украине ばかりだった。

このわずかな違いを他言語へ訳出することはほぼ不可能と言ってよい。両国のロシア語話者たちはこのような前置詞の使い分け一つからも何らかの感情を得ているのかもしれない。