2022年8月19日に Warren Bernhardt が亡くなったという知らせを聞いた。
Warren Bernhardt は個人的にとても思い入れのあるピアニストだ。思い出を書き記しておきたいので書く。
高校時代、家の中で流れていた Bill Evans の Waltz For Debby からジャズピアノに興味を持ち、父にCDを貸してもらって iPod でよく聴いていたのが、Bill Evans Trio の Consecration、Keith Jarrett Trio の Standards Vol.1, 2、そして Warren Bernhardt の Trio '83 だ。そして、これらの中でも、Warren Bernhardt を一番多く聴いていたと思う。
Trio '83 は、dmpレーベルから出ている、Eddie Gomez, Peter Erskine とのトリオのアルバムで、Bill Evans の "Fun Ride", "My Bells" や、ウェザーリポートの "A Remark You Made" などが収録されている。これらの曲は、Warren Bernhardt の演奏で生まれて初めて耳にした。Trio '83 はどの曲もよく聴いたが、軽快なリズムの "New Samba"、様々な感情が入り乱れる中にもポップな格好よさもある即興演奏の "Four Part Improvisation"、Bill Evans への敬愛を感じるソロピアノでの "My Bells" の3曲を続けて聴くのが特に好みだった。ジャズピアノにおける表現や音楽の内容も、このアルバムを聴く中で自分の引き出しに入ったものが多いと思う(初めて自分で意識した 13sus4 のコードは "New Samba" の冒頭の G13sus4 だと記憶している)。
大学に入ってからは、Warren Bernhardt の他の演奏も聴きたいと思って、ディスクユニオンでCDを探した。移転前の新宿のディスクユニオンやお茶の水のディスクユニオンのジャズピアノの「W」の棚を端から端まで見ては Warren Bernhardt のCDが一枚もなく落ち込んだという経験は何度もある。
Trio '83 以外のトリオアルバムも中古でいくつか入手したが、中でも Ain't Life Grand という Jay Anderson, Danny Gottlieb とのトリオアルバムをよく聴いていた。一曲目には Mike Mainieri の名曲 "Sara's Touch" が収録されていて、このテイクも何度も何度も聴いた。フュージョンバンド Steps Ahead も好きだが、元はといえば Warren Bernhardt から入ったと思う。
高校時代は本当に Bill Evans と Warren Bernhardt と Keith Jarrett ばかり聴いていて、彼らがジャズピアニストたちの中でどのような特徴を持っているかなどは考えなかったが、今思うと、Warren Bernhardt のような、端正で、楽器にも音楽的内容にも丁寧で、それでいて飽きさせないピアノ、アレンジメントは無意識のうちに自分の道しるべになっていたのかもしれない。結局一度も直接演奏を聴くことはできなかったが、高校以来数多くの心象に結びついてきた彼の音楽に改めて感謝します。
R.I.P.