Chick Corea "Windows" とシンメトリカルスケール
2022/3/4
Windows
Chick Corea の Windows の17小節目からの8小節間はEメジャー7th(テーマに#11があり基本的にはEリディアン)一発ということになっているが、Chick Corea (p)、Christian McBride (b)、Steve Gadd (d) の3人による Super Trio というアルバムのテイクでは、毎コーラスこの部分でただのEリディアンではない不思議な響きが聞かれる。
(YouTubeにあるが公式ではないため貼ることはしない)
ピアノイントロの途中、およそ0分42秒あたりからの音形は、
のようになっていて、ぼんやりと
という6音音階を感じる。
この音階は、
短三度、短二度、短三度、短二度、短三度、短二度、・・・
の繰り返しでできているシンメトリカルなスケールで、巷では「シンメトリカル・オーギュメント・スケール」などと呼ばれている。
ドミナント7thとコンディミ
シンメトリカルなスケールといえば、通称「コンディミ」と呼ばれる8音音階
がジャズではよく聴かれるものの一つだと思う(譜例はCから始まるコンディミ)。このスケールは
全音、半音、全音、半音、全音、半音、全音、半音、・・・
の繰り返しでできている。
コンディミは、C7の構成音(C, E, G, Bb)に、
- フラット9th(Db)
- シャープ9th(Eb)
- シャープ11th(F#)
- ナチュラル13th(A)
を足したものと捉えることができ、7thコードと相性がよい(C7のときにCのコンディミがよく似合う)。
この7thコードとの相性を少し違う見方をしてみると、
コンディミは、7thコードの構成音を全て含むシンメトリカルスケールのうち、ただの半音階となってしまわない唯一のもの
ということもできる。
メジャー7thとシンメトリカルオーギュメント
上で述べたドミナント7thとコンディミの関係を念頭にもう一度シンメトリカルオーギュメントスケール
を見ると、このスケールには、Eメジャー7thの構成音(E, G#, B, D#)が全て含まれている。
先ほどと同じようにコードからシンメトリカルスケールを特徴づけるならば、
シンメトリカルオーギュメントスケールは、メジャー7thコードの構成音を全て含むシンメトリカルスケールのうち、一番小さいもの
と言い表すことができる。
9音音階
コンディミのときのように「ただの半音階となってしまわない唯一のもの」と言わなかったのは、唯一でないからであり、Eメジャー7thの構成音が全て含まれるシンメトリカルスケールで、半音階よりは音数が少ないものは、上で述べたシンメトリカルオーギュメントスケールの他に、
の2つがある。これらは両方9音音階で、
半音、半音、全音、半音、半音、全音、半音、半音、全音、・・・
の繰り返しでできている(メシアンの「移調の限られた旋法」の第3番や、「チェレプニン音階」と音の並びは同じ)。
メジャー7thの上でシンメトリカルスケールを弾く
ドミナント7thの上でコンディミを弾くことはよく行われるが、メジャー7thの上でシンメトリカルオーギュメントスケールや「チェレプニン音階」を弾くことはあまり行われない。シンメトリカルスケールは往々にして不安定な印象を与えるので、メジャー7th上で弾くのはあまりふさわしくないかもしれないが、選択肢の一つとしてはかなり魅力的だ。